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【検証実験】100円ショップの「iPhone充電ケーブル」って本当に急速充電できないの?

  2019/05/12

文春オンラインというサイトに100均ケーブルについての検証記事が上がっていました。

100円ショップの「iPhone充電ケーブル」って本当に使えるの? 3つの要注意ポイント | 文春オンライン

書かれたのはImpressなどでも執筆されているITライターの山口真弘さん

100均Lightningケーブルは急速充電でエラーになりやすいとする内容でしたが、それは私の経験とはまるで一致していませんでした。
同じケーブルを買い集めて計測してみましたが、やはり私のデータとは異なっています。
同じものを計測しても、2人で真逆とも言える結論を導き出していることをとても興味深く思いますし、一般読者はどのように検証記事と向き合うべきかという課題を突きつけられています。
私と山口さんの計測結果を参照しつつ、数字を読み解いていきましょう。

上記の記事を読んでおくと全体の問題を把握しやすくなりますので、軽く目を通しておくといいでしょう。

※本記事内で使われる画像で『山口さん』とキャプションの付けられたものは、すべて山口真弘さんによる上記の記事からの引用となります。
それ以外の画像は私が作成したものです。

 

1A通常充電

使用したケーブルは100均製品を3点と、Appleの純正Lightningケーブル。

▼山口さんの用意したケーブル

▼私の用意したケーブル

左から、ECoreの「L-8」、大創産業の「携帯電話No.68」、山田化学の「No.671」

まず山口さんのテストでは、純正の1A充電器での計測で全商品が1A近くの電流値を示したということです。

▼山口さんのテスト画像

ここでの計測結果には異論はありませんが、注目しておくべき点としてはピンク色のダイソーケーブルが1.08Aと、充電器性能の上限であるはずの1Aを超えているところです。

私も同様に計測してみました。

▼Apple純正 → ダイソー → 山田化学 → ECoreの順に並んでいます。

バッテリー残量5%のiPhone 7に対して、ケーブルを4本をつなぎ替えながら計測したグラフなのですが、私の計測でもやはりダイソーのケーブルだけが突出した電流値を示しています。
他のはほぼ1Aで頭打ちです。

次に0%から満充電までの電流値の変化を見てみましょう。

▼Apple純正1A充電器でiPhone 7を0%から満充電までのグラフ

やはりダイソーのケーブルだけ突出しています。
同じ充電器を使っているのに、純正Lightningケーブルよりも10分以上早く満充電になっているのがわかるでしょう。
山口さんは誤差として特に触れることなく処理をしていましたが、こうしてグラフにすると説明が必要になるほど明確に何かが違うことが見えるはずです。

 

急速充電

続いてはAnker製の急速充電器を使った計測結果。

▼山口さんのテスト画像2

さて、この画像のキャプションには以下のように書かれています。
“右下の純正ケーブルは2倍近いパフォーマンスを発揮していますが、ほかのケーブルは急速充電ができておらず、また右上のケーブルに至っては充電自体が行えていません”

そして、この結果を以て100均ケーブルを“急速充電では「エラーが起こりやすい」”と評しています。

対して私の意見は違います。計測結果から見ていきましょう。

▼急速充電器でiPhone 7を0%から満充電までのグラフ

純正ケーブルとダイソーがまったく同じ線を描き、山田化学とECoreも同じ線を描いています。
急速充電になるものとならないもので、綺麗に2つに分かれましたね。

山口さんの記事にはPowerIQ搭載とだけ記述されており、具体的な製品名は不明でしたので、私の計測には同じAnker製品を使用しました。(PowerPort Speed 5の非Quick Chargeポートを使用)

ダイソーのケーブルでもしっかりと急速充電になっていることが確認できます。純正のケーブルともほぼ一致する見事な結果です。
私はこの実験の前から、長さ違いも含めてこのタイプのダイソーケーブルを4、5本持っていますが、どれもしっかりと急速充電が行えており、急速充電でエラーが起こりやすいなんてことはありません。たまに充電できないことはありますが、それは裏表を間違えたときです。
むしろ急速充電向きのケーブルなのです。

一方で、山田化学とECoreのケーブルでは急速充電になっていません。
それもそのはず、この2本はコネクタに大きく『1.5A以下の充電器をご使用ください』と書いてあるように、もともと急速充電には非対応のケーブルなのです。
(グラフでは0.92Aと少し低めの値が出ていますが、これは電源オフの状態で充電したときの特性で、電源オンの状態で計測すると0.98A程度の電流値になります)

パッケージにもこう書かれています。
『充電器はiPhone用純正充電器または1.5A以下のものをご使用ください』
『2A等の急速充電器を使用した場合、故障の原因となりますので使用しないでください』

100均のケーブルが急速充電でエラーになるのではありません。山田化学とECoreのケーブルは急速充電に対応していないのです。

山口さんの記事で一番の問題は、ダイソーケーブルで電流が計測できなかったというデータを元に結論を導いてしまったことです。
どんな実験でもそうですが、計測ミスや機材の不備によって期待値を大幅に外れてしまう結果が出てしまうことがあります。
そうしたデータが出てしまったならば、まずやり方と機材を見直すべきです。
ちゃんと計測できていないデータを元にして実験結果をまとめると、当然のことながら結論も間違ったものになってしまいます。

粗悪なケーブルだったとしても、まったく電流が流れていないのは異常です。
またダイソーのLightningケーブルは2.1A対応とパッケージに小さく書かれているように、急速充電にはしっかりと対応しています。
対応しているはずなのに急速充電ができていないのなら、製品が不良であるか、計測方法が間違っているかです。おそらくはケーブルの表と裏を間違えているのでしょうけど。
その問題の切り分けができていない以上は、この実験には不備があるとしか言えません。

実際に急速充電でエラーになって使えないというのであれば、それは不良品です。
ダイソーはレシートがなくても不良品の返品・交換ができますから、購入された店舗に行くべきでした。

 

100均ケーブルで気をつけるべき3つのポイント

山口さんは記事内で100均ケーブルで気をつけるべき3つのポイントとして以下を挙げています。

・表裏があること
・充電にしか対応しないこと
・特定バージョンまでしか動作確認が取れていないこと

揚げ足取りではなく知識として補足しておきますと、Lightningケーブルは裏表無く使えるケーブルとして知られていますが、実際には純正ケーブルにも裏表があるのです。
端子の配線は裏表で対称ではなく非対称です。それをiPhoneが動的に検知しているというだけで、裏表が無いということではありません。裏表を気にせず使える端子なのです。

詳細な解析は以下の記事を参照のこと。
Systems Analysis of the Apple Lightning to USB Cable | Chipworks

まぁどっちが表かと聞かれると困るので、一般的には表裏はないということでもいいとは思います。

100均ケーブルが充電にしか対応しないというのは認識不足で、同期にも対応したものがこれまでに2種類存在しています。(いま店頭で販売されているのは1種類)
1つは過去に販売していたリール型のもの。
もう1つがMicroUSBとLightningがひとつになったキメラケーブルです。どちらも以前に紹介しましたね。

山口さんは充電しかできないことの説明として、以下の写真を提示しています。

▼山口さんによる純正ケーブルと100均ケーブルの端子比較

片面にしかピンが配置されていないことを説明した後に以下のように書いています。
“データ転送に使われるピンが省略されているのが分かります”

たしかに通常であれば片面に8本あるはずのピンが2本足りていませんので納得しそうになりますが、これも間違いです。
下の写真は私の手元にあるデータ転送に対応したリール型ケーブルと、充電専用のリール型ケーブルの比較写真です。

▼充電専用← | →同期対応

端子部分に注目していただくとわかるように、どちらもピン数が2本不足しています。しかし片方はしっかりとデータ転送にも使えるのです。
左から2番目と3番目がデータ通信用のピンで、テスターを使って確認すると、データ転送に使えるほうは左から2番目がUSB-A端子のD+と、3番目がUSB-A端子のD-と結線されていました。
データ転送ができないほうのケーブルは、データ通信用の銅線がそもそもありません。

ピン数が不足しているから同期ができないというのは明確な間違いです。

よく100均ケーブルのリスクとしてiOSのアップデートで将来的に使えなくなる可能性があるという説明がなされますが、上のリールケーブルが2015年から今現在も充電・同期ともに問題なく使えている事実はお伝えしておきます。
そもそも100円なんですから、使えなくなることをリスクだなんて過大に怖がる必要は無いです。
MFi認証があるから安心と書かれることも多いですが、Apple純正だろうがAnkerだろうが壊れるものは壊れるし、1,000円のケーブルが100均の10倍長持ちということもありません。

じゃぁMFi認証ケーブルを選ぶ必要なんて全くないのかというと、またそれは別で、ちゃんとあれには価値がある。
また別途解説記事を書きますが、安心して使いたい人はMFi認証ケーブルを選ぶほうが良いというのは正しいです。

 

おわりに

この記事は私の計測結果と山口真弘さんの計測結果を比較しただけで、なぜそうなるのかという核心には触れていません。
今回の記事では、2人がそれぞれ同じケーブルを計測しても、まったく違った結論になるということを示すことが目的でした。
前提となる知識によって、計測で得られた数値をどう解釈するかが異なってしまうためです。

検証というのはデータがあるとそれだけで多くの人は正しいと思い込んでしまうため、その数値が正しいのか、その数値の解釈はあっているのかまで踏み込む人はほとんどいないのです。
数字を疑う癖を付けましょう。

山口さんの記事では100均の3製品がどれも急速充電できなかったということでしたが、そもそも急速充電に対応していない2製品は仕様どおりであり、ダイソーの製品はちゃんと急速充電に対応しておりました。
私の計測ではどの製品でも充電エラーは確認できていません。
100均のケーブルはエラーになりやすいというよりも、ケーブルの仕様を把握していないまま記事を書いた人間のエラーであったと結論付けます。

さて、この記事では説明しなかった重要なポイントが2つあります。

『なぜ急速充電器につないでも1Aしか出ないケーブルがあるのか』

『なぜダイソーのケーブルだけ高い電流値を示すのか』

これらにはちゃんとしたデータの裏付けがあります。
次の記事ではそれを解明していきます。次が本編。マジで面白いです。

↓こちらが本編。長い。
計測で徹底解明 100均Lightningケーブルの驚くべき仕様と、純正ケーブルを超えるその性能 | reliphone

Comment

  1. 名無しさん より:

    続きが楽しみ。

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