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モバイルバッテリーの中身についての話

 

モバイルバッテリーにはいろいろなメーカーがありますが、その心臓部にあたるバッテリーセルまで作っているメーカーはほとんどありません。
Ankerやcheeroといったメーカーでさえ、電池メーカーが作ったバッテリーセルを仕入れて組み込んでいるにすぎないのです。
性能を左右する心臓部であるはずの重要な部品ですが、どういうものを組み込んでいるのかはほとんど語られることはないので、基本的なところを少しだけ解説してみます。

 

18650電池

モバイルバッテリーはその中身に18650という単3電池をちょっと大きくしたバッテリーセルというものを組み込んでいるものが多いです。

18650電池というのは直径が18mm、高さが65.0mmということを表した規格で、1本でだいたい3,000mAh前後の容量があります。
(単3電池は直径が14mm、高さが50.0mm)

例えばcheeroのPower Plus 3 6700mAhには3,350mAhの18650が2本入っていて、3,350mAh×2=6,700mAhとなります。

Power Plus Danboard Version 10050mAhは10,050mAhというなんだか中途半端な容量を持つ製品ですが、これには3,350mAhの18650が3本入っているから3,350×3=10,050mAhという容量になるわけですね。
cheero Power Plus Danboard Version 13400mAhは4本になって3,350×4=13,400mAh。

AnkerのPowerCore II 10000なんかは3,350×3なのに、わかりやすさを優先したのか50を切り捨てちゃってるというものも。

なんだか中途半端に見える容量も、そういう事情がわかれば納得できるかと思います。
そういう知識を持ってモバイルバッテリーを眺めていると、「この形は18650が2本入ってそうな形だな」とか、「この製品は薄いから18650じゃないな」ということがわかってきます。
逆に言うと、18650電池を使っている限りは、大きさと形状が似通った製品になってしまうため、6,700mAhの製品ならどれも同じようなサイズと重さに着地してしまいます。

18650の良いところは扱いが容易だということです。
電池のように金属製の筒で覆われていますし、規格としてサイズが統一されていますから、モバイルバッテリーの製造メーカーは18650のサイズに合わせてケースを製造して、あとは制御基板とバッテリーセルを組み込こむだけで完成します。
デメリットとしては1本1本が金属の筒で覆われているため、使用する量が増えるほど重量面では不利になります。
また円柱のものを並べると、どうしても隙間が生じてしまいますので、容積あたりの密度という点でも不利です。
しかし1つ1つが安全なパッケージに収まっているため、安全性の面では有利です。

単三乾電池は1.5Vですが、18650電池は3.6V~3.7Vもあります。
モバイルバッテリーには必ず3.6Vとか3.7Vという表示がありますが、それはこのバッテリーセルの電圧を示したものです。
基本的には並列で使われるのですが、cheeroの過去の製品には直列で7.4Vというものもありました。
直列だと電圧が稼げる一方で、セルごとの性能に差があるとバランスが崩れてしまうので扱いが難しくなってしまいますが、ばらつきの少ないパナソニックのセルを使うことで実現していたのでしょうね。現行モデルでは直列ではなくなっているようです。

18650電池はいろんなメーカーが製造していますが、有名なところとしてはパナソニックやLG製のセルがその中でも良いものとして扱われています。
パナソニックは性能を公表しており、下の図のように500回の充放電サイクルで80%の性能になります。
これはiPhoneのバッテリー性能と同じですね。

▼充放電サイクルの特性

引用:Specifications for NCR18650BF

LGなども基本的に500回で80%の性能。

もちろんメーカーによってはもっと早くに劣化してしまうものもあるわけですが、基本的にモバイルバッテリーがどこのメーカーのセルを使っているかは公表されませんので、実際に購入して分解してみないとわかりません。
かつてcheeroは一部の製品でパナソニック製のセルを使用していることを明記していましたが、電気自動車などのバッテリー需要が増えるにしたがってパナソニック製のセルを確保するのが難しくなったということで、現在ではバッテリーセルのメーカー名を非特定のものとしています。
参考:【モバイルバッテリー仕様変更のご案内】|cheero | Facebook

18650はサイズが統一されていますから、調達先のメーカーが変わったとしても組み立て製造に問題がなく行えますし、特定の部材に縛れず柔軟な調達ができるというのは供給の安定化とコスト削減にも繋がります。
モバイルバッテリーの製造メーカーが安定して特定のバッテリーセルを確保できる状況を作れない以上は、セルのメーカー名を表示して販売をするというのは難しいのでしょう。

どこのセルを使っているのかが気になる方はSONYやマクセルなど、電池製造まで手がけるメーカーのモバイルバッテリーを購入されると安心だと思います。ちょっとお高いですけどね。
パナソニックは電池メーカーとして一流ですが、モバイルバッテリーはすでに手を引いてしまっているようで現行製品はありません。SANYO時代からいい製品を作っていただけに残念です。

 

リチウムポリマー電池

薄型のモバイルバッテリーで使われているのがリチウムポリマー電池です。
iPhoneにも内蔵されている薄くて銀色パッケージのやつですね。

これにもサイズによる命名規則があって、例えば602535と書かれていた場合、厚みが6.0mm、幅が25mm、奥行きが35mmというサイズになります。
薄くて無駄のない形状にできる一方で、アルミラミネートの外装は外部からの力に弱いため、バッテリー交換を前提としない組み込み型での使用が多くなっています。
製品に合わせてサイズを変えやすいことや、液漏れやガスが発生しにくいなどのメリットがあります。
高サイクル特性もあるため、高寿命も期待できる。(SONYの製品では約1,000回も繰り返して使えると宣伝しています)

薄くできる一方で外圧に弱いわけですから、曲がらないよう取り扱いにに気をつける必要があります。
薄型のモバイルバッテリーを尻ポケットに入れたまま座るなんてのは避けるべきです。

 

21700電池

21700電池という、18650よりも大きな電池が使われることが増えてきました。

21700は18650と比較して直径が3mm、高さが5mm大きくなりますが、容量は1本5,000mAh程度と大幅に増えています。
10,000mAhのモバイルバッテリーを作るのにこれまで18650が3本必要だったのが、21700なら2本ですむ。

それをやっているのがAnkerの新製品PowerCore 10000 Reduxで、これにはLG製の21700電池が2本入っていると考えられてます。
AnkerのPowerCore 5000やRAVPowerのRP-PB134のように、スティック型で5,000mAhの容量をもつものも、21700なのでしょう。

これまでテスラの電気自動車では1台あたり6,000本以上の18650電池が使われてきましたが、パナソニックと共同で専用の工場を立ち上げるなどして21700への切り替えが進んでいます。
ただ今後モバイルバッテリーも21700電池に置き換わっていくかというと、それはどうかなーと。

まず大電流を取り出そうとした場合はセル数を多くして並列で取り出すのが有利です。
21700を2本よりも、18650を3本にしたほうがバッテリーセルには負担が少ない。あと安くて調達もしやすいですからね。
ですから、18650が主に使われるのには変わりはなく、21700を使うのは小型化や持ちやすさを意識した製品に限られると思います。

 

おわりに

モバイルバッテリーのメーカーは中身のセルのことも公表してほしいというツイートを見て書きはじめたのがこの記事です。

まぁ単三電池でも、よくわからんメーカーの充電池とエネループでは性能が全然違うわけですが、スペックとしては電池自体に書かれている容量表記がすべてです。
モバイルバッテリーの容量も、実はセル自体のスペックを表示しているだけなので、使われているのがパナソニックのA品のセルであろうが、よくわからんメーカーのB品セルであろうが、スペックとしては3,350mAhとなってしまう。

中身の実際の性能はわからないのに、スペックだけで判断して購入しなくちゃいけない。
使用セルは非公表だけど安いのがいまのモバイルバッテリーの主流。

高くてもいいものをって流れはあると思うので、パナソニックさんにはまたモバイルバッテリーを作ってほしいものです。

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Comment

  1. 名無しさん より:

    とても勉強になりました

  2. 名無しさん より:

    ラジコン愛好家ですが、Li-Poバッテリーはむしろ18650より内部のガスは発生しやすいかと思われます。劣化しても18650ではガスが排気されますが、Li-Poはラミネートで気密性が高く膨れ上がってしまいます。iPhone8 Plusの膨張事件もいい例です。

    • maxi より:

      18650はガスが抜ける安全弁があるので、ガスが発生しても気付きにくいということかと思います。
      リチウムポリマーは電解質をポリマー化することで、電解液よりもガスが発生しにくくなっているという資料はメーカーや研究機関から多数出ていまして、私が書いているのはその点についてです。

      『ガスが発生しにくいのはどちらであるか』なら、リチウムポリマーと答えますが、『膨らみにくいのはどちらか』なら、18650と答えます。

      • 名無しさん より:

        ポリマーの方がガスは出にくいのですね
        不勉強で失礼しました

        • maxi より:

          たしかにリポのほうばかりが膨張しまくっているイメージはありますよね。
          実際にバッテリーをたくさん扱う実体験からするとガスが出やすい印象になるのも当然かなと思います。

  3. ayato9 より:

    モバイルバッテリーはいつも持ち歩いていますが
    気になるのがたまに発火のニュースがあることです
    メーカーとか、電池の種類とか事故が起こりやすい
    物ってあるんですかね?
    行政機関からとか注意喚起があるといいんですけどね

    • maxi より:

      リコールや発火の情報は公開されていますが、リコール対象になった特定の製品を避ける以外は何を選べば安全という明確な基準は無いと思います。
      たとえばAppleなんかでも扱いが悪ければ発火するものがありますし、AnkerやCheeroにも発火報告はあります。
      よくわからないメーカーの安い製品は何かを犠牲にしていることがあります。
      その犠牲にされているものが安全面であるか、セルの容量偽装であるかは誰かが分解して調べてみないことにはわからないのです。
      無難な回答にはなりますが、ちゃんとしたメーカーのベストセラー商品を購入するくらいしかないですね。

      あとは落として強い衝撃を与えたり、車内に放置しないなどの心がけです。

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