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Find Myによる待望のUWB活用とタグまわりの話

  2021/05/01

iPhone 11から採用された技術で、ほとんど脚光を浴びてこなかったUWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線)ですが、AirTagの登場により、いまようやく脚光を浴びています。

これまでiPhone 11と12以外の製品でUWBを使うことができるU1チップを搭載してきたのはHomePod miniとApple Watch series 6だけで、活用されているとは言いがたいものでした。
iPhoneをHomePod miniに近づけるだけで聞いていた音楽をシームレスに引き継ぐという使い方は体験として素晴らしいですが、ほとんどのユーザーにとって使う機会がないままです。

下の動画はAppleの発表会でHomePod miniにUWBで接続するシーン。

UWBを使うと対象との方向や距離を正確に測ることができるため、対応デバイスの増加によって、もっと日常に溶け込んだ存在として活用されることが期待されています。例えば車や自転車のキーとして使うとかですね。CarPlay機器が対応するのも便利そう。

さて、話はAirTagに戻ります。
これまでの紛失防止タグはBluetoothを使ったもので、まぁ試せばわかるのですが、電波だけを頼りに探そうとするとかなりの期待外れです。安定しません。
AirTagに先行する製品として、TileやMAMORIOといった製品が市場に出ていますが、同じような括りでありながら意外と仕組みが異なっています。

TileはスマホとBluetoothでの1対1接続をするデバイスで、スマホからTileを鳴らしたり、逆にTileのボタンを押すとスマホを鳴らせたりします。

スマートスピーカーやSiriショートカットなどからも使える点が実用的だと思います。
一部の機能がサブスクリプションで利用可能となっているのがちょっとイマイチ。

MAMORIOもBluetoothを使っているのですが、Tileと違い、スマホと相互に通信するわけではありません。
iBeaconという規格を使っており、MAMORIOは一定の間隔で電波が送信しているだけ。
相互に接続しているわけでもないので、音を鳴らしたりもできません。電波が検知できれば近くに捜し物がある、と割り切って使うといいでしょう。

機能が割り切っている分、本体が小型で、財布や手帳に入れておくのも可能なサイズであることが人気。

ただスマホ側で電池残量を知ることが出来ない仕組みなのに、電池寿命が公称よりもはやく切れてしまうのはよろしくないよね。(検知できなくなってようやく電池切れに気付く)

AirTagは音を鳴らすこともできるだけでなく、UWBを使って距離や方向を正確に把握できるため視覚的にも場所がわかるので、Tileよりもさらに探しやすくなっています。

音を鳴らせるということはTileのようにBluetooth接続で繋がるはずですが、紛失モードを使っているときには一定周期でビーコン電波を発信するiBeaconのようにも振る舞うと考えられます。
「ここにあるよ」とBluetoothでビーコン電波を発信するフェーズと、持ち主が近くまで来たらUWBで正確な位置を示してくれるフェーズがある。

『Bluetoothの紛失防止タグ』という括りによって、どれも似たようなものという認識で止まってしまっている人も多いのですが、これらの性格は結構違うものです。
TileやMAMORIOといった製品と比較して、AirTagが優位である点は、紛失モード時の膨大なネットワークにあるといわれています。
どの製品でも紛失モードになると、自分以外のスマホがタグを一緒に探してくれるようになりますが、Tileを探せるのはTileユーザーだけ。MAMORIOを探せるのはMAMORIOのユーザーだけ。要するに同じメーカーの製品を使うユーザーが身近にどれだけ居るのかが発見率を上げる鍵となります。
AirTagはそこが異なっていて、AirTagを使っていようがいまいが関係なく、膨大な数のAppleデバイスが自動的に捜索に参加してくれるのです。BluetoothがオンになっているiPhoneやiPad、Macが近くを通れば検出される。周囲にTileユーザーやMAMORIOユーザーを発見することは難しいですが、iPhoneユーザーならいたるところに居ます。参加してくれるデバイス数が雲泥の差なので、紛失モードでの発見率の高さは比較にならないでしょう。

そして比較記事で抜け落ちがちですが、私がもっとも重視しているのは、アプリの存在です。
TileやMAMORIOはタグの位置をトレースするために、それぞれのアプリを位置情報オンにした状態でのバックグラウンドで起動しておく必要があります。
これがバッテリー消費を加速させるし、あなたの日常生活における位置情報もサーバーに送られ続ける。
AirTagはiOS、iPadOS、macOSにiOSに組み込まれた機能を使いますから、日常的にアプリを起動しておく必要がありません。探すときだけアプリを使えばいい。

しかしその一方で、ユーザーが意識しないままにデバイスのリソースを利用される状況にあるのは頭に入れておくべきでしょう。
あなたの所有するiPhoneがBluetoothで周囲の電波を拾い続けるのも、落とし物の電波をキャッチしたときにGPSで位置情報を取得するのも、サーバーに送信するのも、それは本来個人個人のリソースであるはずで、『みんなの』でも、『Appleの』でもないはずですから、誰かの捜し物に協力するかは設定で変更できるようになっていてほしいものです。
『Find Myネットワークに参加する』くらいのわかりやすい設定があるといいんですが。

【追記】
それっぽい設定がありました。
設定 → Apple ID → 探す → iPhoneを探す → “探す”のネットワーク
ただこれをオフにするとオフライン状態の自分の端末を探すことも出来なくなりそうで微妙。
【追記終わり】

プライバシーについてはどうでしょうか。
MAMORIOの使うiBeaconは固定されたIDをBluetoothで常に送信し続けます。
IDを隠すことができない状態で、自分の周囲数十mに電波を発信し続けるため、特定のタグの接近、つまりは特定の個人の接近が簡単に検知できてしまうわけです。
電波は目に見えないから気にする人も少ないですが、無料のアプリでも入れれば簡単にMAMORIOの電波を捉えることが可能です。ラズパイなどの安価な装置で接近を記録、通知することができてしまう。
正直なところ、MAMORIOはプライバシーまわりに不安があります。そもそもMAMORIOアプリのプライバシーポリシーではリアルタイムに位置情報を収集し、第三者へと提供することが明記されていますから、そのあたりに敏感な人は手を出さないでしょうけど。
MAMORIOのビーコン電波をトレースされていたとしても、見られていることを知ることはできませんから、iBeaconって個人が持ち歩くものに使う技術じゃないと思ってます。わかってて使うならいいけど。
すれ違ったタグのデータと位置情報をMAMORIO社が把握可能な現状は、ユーザー数が増えるとかなり悪夢な状況になるのではないかな。

AirTagの場合は動的にIDを変更するようになっているそうですから、持ち歩いても外部からビーコンとして追跡・監視される心配はなさそうです。これは個人のプライバシーを守るためには必須の項目でしょう。
位置情報に関してもエンドツーエンドで暗号化されるとのこと。

私がAirTagの発表前から危惧していたのは、日本特有ともいえるiPhoneユーザーの人口密度の高さによる、発見精度の高さが仇とならないかどうかです。
都市部における大量のiPhoneユーザーが、まるで移動するレーダーのように機能すると、タグはかなりの確率で発見できることになるでしょう。
そうした場合、AirTagで誰かを追跡したり、居住地を突き止めたりできてしまうのではないかという不安があります。
もちろんAppleもそうした懸念は織り込み済みで、以下のように書かれています。

AirTagは、不要な追跡に使われないように設計されています。誰かのAirTagがあなたの持ち物に紛れ込んでも、あなたのiPhoneがそれを検知してアラートを表示。見つけられない場合でも、AirTagが音を鳴らし始めるので安心です。

AirTagを付けている友だちがそばにいても、電車の中でAirTagを持っている人たちに囲まれても、心配ありません。このアラートは、AirTagが持ち主から離れた時だけ有効になるからです。

AirTagには加速度センサーが入っていて、持ち主のスマホと離れた状態でタグが移動した場合にはアラートや音を出すということなので、誰かをこっそりと追跡する目的には使いにくいでしょう。ただしスピーカーを無効にする改造をした場合や、アルミホイルと吸音材で包んだ場合などにも有効な対策であるのかは未知なので、完全には不安を払拭できていません。先行して実機を手に入れている記者さんたちも歯切れが悪いままですし、実物が出てこないとなんとも言えない点が多いです。
盗難防止タグとして、例えば自転車に隠して付けて盗まれた場合に追跡するなんてのも向いていない感じですが、自転車用には別途サードパーティーから自転車本体に組みまれたVanMoof S3/X3のようなFind My対応製品が登場します。これがAirTagとはどのように違った動作をするかは気になるところです。
個人的には既存の自転車に後付けできるペダルやサドルに組み込まれたFind My対応製品が出てくれると嬉しいんですけどね。

サードパーティーのFind My対応タグとしては、前述の自転車組み込み型VanMoof S3/X3、コイン型の小型タグChipolo ONE Spot、完全ワイヤレスイヤホンのケースに組み込まれたBelkin SOUNDFORM Freedomの名前が挙げられています。AirTag対応アクセサリではNOMADが眼鏡ストラップやレザーキーホルダータイプを、Momentは貼り付けタイプのMoment Mountなどを発表しています。

サムスンもUWB技術を使ったAirTagと同等のSmartTag+を発表しており、4月16日から発売開始、価格は39.99ドルとのこと。

SmartTag+もIDの動的な変更機能を備えています。15分ごとにランダムなIDを生成するとか。
あとはタグにボタンがあって、それを押すことで部屋の電気を消したりできるスマート家電のスイッチとしても使えるそうな。いいね。
なかなかそそるけど、Galaxyを持ってないと使えないのが残念。

MAMORIO電池話

MAMORIOは電池が切れたら買い換えとなる製品がメインなので、電池寿命は重要なポイントです。

第1世代MAMORIO(MAM-001)と第2世代(MAM-002)は電池寿命最大1年として販売していました。
その後に発表されたMAMORIO S(MAMS-001)は「電池寿命は約1年間の長寿命をそのままに」でした。最大1年と約1年というまやかし。

それなのにMAMS-001発表後には、MAM-002のスペックが電池寿命約8~10ヶ月(ご利用状況により変動)と変わっています。そんな後出しありですか。
まぁ電池交換できない上に、寿命が1年ないものは営業的にも売りにくいのはわかるけど。消費者庁に怒られろ。
ちなみにさらに後継のMAM-003は「従来の「MAM-002」より電池寿命が約20%向上しました」と書かれた記事が見つかるが、電池寿命はやはり約1年らしい。

たぶん今後の次世代機種でも「電池寿命が1年に向上しました!」って宣伝しそう。
最近出た充電式のものは「最大6ヶ月 但し3ヶ月以内の充電を推奨」と書かれていたので、ここでの文脈を踏まえた上で「最大」の意味をよく考える必要がある。

MAM-002の電池寿命最大1年、MAMORIO S(MAMS-001)の電池寿命約1年という表記が並ぶ 2018年3月7日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000062.000022173.html

MAM-002の電池寿命が約8〜10ヶ月と短くなる 2019年3月29日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000117.000022173.html

MAM-003 電池寿命が約20%向上したIoT紛失防止デバイス 2019年06月08日
https://weekly.ascii.jp/elem/000/001/872/1872203/

MAMD-001 電池寿命が最大6ヶ月 但し3ヶ月以内の充電を推奨 2021年4月14日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000178.000022173.html

ちなみにさっきも書いたけど、MAMORIOには電池残量を検知する仕組みがないので、電波を検出できなくなってはじめて電池切れがわかる。
アプリ側で表示される電池残量は、実際の残量ではなくて使い始めてからの日数ベースなので信じると危険。
https://support.mamorio.jp/ja/articles/4617911

ご利用状況で電池寿命が変わるとはいうけど、MAMORIOって電波を一定間隔で送信するだけで、相互に通信するわけでもないんだから、周囲の電波状況が悪いせいでバッテリーが余計に消費されるなんてこともないし、電池寿命が変わるとすればせいぜい温度くらいしか要因がないのでは?と不思議に思ってる。
いったいどういう条件ならスペック通りの電池寿命を達成できるのかメーカーは明示してほしいね。

 

おわりに

ひさびさ。
ずいぶんと空いてしまったせいか、なんだか書いても書いても全然まとまらないので、途中で諦めた。

こういうブログをやっているとAppleびいきに思われるだろうけど、AirTagを注文し忘れるくらいの距離感です。手に入れていろいろ試したいなと思ってたけど、予約開始日時を忘れて長風呂してた。公園に埋めて宝探しごっこがしたいのに。
まぁいずれ手に入ったら記事を書くかもしれませんが、発売日にいろんな人が腐るほど記事をアップすると思うので、後発だとあんまり意味ないかな。

素人の考える不安材料なんてのはAppleも十分に検討して対策した上で発売するはずなので、プライバシーに関する不安を過大に抱く必要はないと思うんですが、興味本位や、悪意をもってハックしようと考える人も当然出てくるので、どこまで安全性を担保できているのかはしばらく様子見だと思います。
個人的には7:3くらいで不安のほうがでかいけど、杞憂に終わることを願ってる。

UWB対応のタグはAppleとSamsungだけじゃなくGoogleが参入する可能性も大いにあると思ってるんだけど、その場合でも「Androidが」ではなく「Google Pixelが」対応する形になるんじゃないかな。
Appleによる寡占ではなく、競争でいい製品がでてくることを期待してます。

 

今日の音楽

ロックスター像からはほど遠い風貌ながらも、曲を聴けばたちまち「お前がスターだ」と認めるほかないのがWill Toledoだ。
その彼が率いるシアトルのインディーロックバンド Car Seat Headrest

久しぶりにライブ映像を見たらその進化っぷりにとても驚かされたので紹介したい。

Car Seat Headrest – Fill In The Blank (Live)

ギターのカッティングが印象的な演奏だが、元の楽曲にはなかったアレンジだ。
いったいこのライブ映像の仕上がりっぷりはどうしたことだろう。興味がある人はぜひ下のオリジナルバージョンと比較してみてください。

Car Seat Headrest – Fill In The Blank

ライブで見たいバンドがまた増えてしまった。

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