人気ポッドキャストアプリOvercastがパトロン制に移行!無料で全機能解放の衝撃

いまでは手放せないほど愛しているアプリのひとつ、これぞEssentialと呼ぶべきポッドキャストプレイヤーがOvercast。

メジャーアップデートで大幅な機能追加とともに驚くべきビジネスモデルを採用することになりました。

Overcast: Podcast Player

Overcast Radio, LLC
評価: 5(61件)

iOS 9.0 以降。
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まずはメジャーアップデートの内容紹介

・ストリーミング対応!
いままでダウンロードしてから再生しなければいけないという縛りがあったのですが、これが改善しました。
新着エピソードが出たらダウンロード完了を待たずに即再生が可能なのはうれしい。

・チャプター対応
チャプター情報を含むポッドキャストの場合にはチャプターを飛ばすことが可能になりました。
これが快適で快適で、多くの番組がちゃんとチャプター情報を付けてくれることを願ってやみません。本当に素晴らしい。
チャプター付きの番組はあまり多くありません。手っ取り早く試したい場合はAccidental Tech Podcastが対応しているのでそちらでお試しを。Overcastの開発者Marco Armentの番組ですから対応してて当然ですね。

・ストレージ管理
どのポッドキャストがどれだけの容量を使っているかが確認でき、不要なものは削除することができるようになりました。
いままで再生後は自動的に削除されていましたが、手動削除のオプションもついていますね。嬉しい。
【追記】コメントで前からあったと教えていただきました。1.2から出来るようになってましたね。見落としてましたすみません。

・アイコンバッジ対応
未再生エピソード数を表示してくれます。

・再生優先度
特に気になる番組を優先して再生してくれるオプションが追加。

・Smart Speedが無音箇所を動的に調整するように
Smart Speedというのは無音部分を削ってくれる機能。
これはおそらく実装が難しいと言われていたストリーミングでも使えるようになったということを示していると思います。

・プレイリストの並び替えや、ストレージ使用量の増大などのバグ修正
このへんはそもそも気づいていなかったので、コメントなし。

・たくさんの小さな改良や最適化

これ書かれていない点としては、内蔵ブラウザがSafari View Controllerになりました。
こんな大きな変更を書かないとは。
Show Notesを開くときに便利になりそうです。
あとはマルチタスクのSplit View対応もですね。

 

新たな課金モデル、パトロン制とは

これまでのOvercastはフリーミアム制でした。
基本は無料で使えるけれど、無音部分を削るSmart Speed、音声を聞きやすく増幅してくれるVoice Boost再生スピード調整などが有料(600円)で備わっていました。
これらは課金をせずとも一定時間だけお試しもでき、実際に何度でも試して納得してから購入ができるというiOSアプリの中では珍しいやり方で、多くの開発者に真似をしてほしい優れた追加課金の手法でした。
そしてもちろん機能も優れていた。
他のアプリと比較するとスピードを変えても声はより自然に聞こえるし、無音部分を削ってくれる機能も時短に大いに貢献してくれました。(アプリの機能紹介に関してはエントリ最後の参考記事内で)

それがこのメジャーアップデートにより、600円だった機能がすべて無料で解放!
本当にすべての機能が無料です。

開発者のMarcoは一握りの成功者と呼べるリッチなエンジニアですが、これは彼の慈善事業ではなく新たなビジネスモデルへの挑戦です。
すべての機能を解放するのと引き換えに導入したのが、パトロン制です。
彼の開発を支援したい人が自発的に支援をするというもの。

課金額はこのようなかたちに。
3か月 360円
6か月 720円
12か月 1,400円

無理にお金を払う必要はなく、支援したい人だけでいい。そして支払ったからといっていまのところ追加の機能はありません。純粋に支援するためのものです。

彼の書くところによると、これまでのOvercastは全ユーザーのうち20%がアプリ内課金をし、80%は機能が制限されたままのアプリを使い続けていたそうです。それはこのアプリ本来の素晴らしい体験を知らないままの人が大半だったということです。
すべての人に等しく完全なアプリを使ってもらうために機能を無料解放したわけですが、しかし開発費やサーバーの維持費は必要です。
それをまかなうためには全体の5%のユーザーがパトロンになってくれれば、今までと同じだけの収入が得られると彼は書いています。

このアプリを愛している人は直接Overcastをサポートすることができる。
実にシンプルで、そして永続性のあるモデルです。

自分の作っているものが素晴らしいことを知っていて、ユーザーがそれに応えてくれることを信じているからこそできる。そうやすやすとは真似のできないことですね。

 

まとめ

ここまで購読制課金への心理的な障壁を下げたというのは非常に大きな転換点です。

多くの人には月額課金に対する拒否反応が強く存在するでしょう。
毎月新しい雑誌が読めるのとは違って、いつも使っているソフトウェアに毎月お金がかかるというのはなかなか馴染めないものです。

これまでiOSアプリのビジネスモデルは買い切りが主流でした。
Appleがアップデートに対する課金手段を用意していないために、開発者は一度売ったアプリを延々とメンテし続けるか、メジャーアップデートのタイミングなどで新規アプリとして販売しなおすくらいしか選択肢がなかったのです。
一部のデベロッパでは月額課金モデルを導入していますが、大きな成功例を耳にすることはありません。成功を喧伝したがる開発者たちが語らないのですから、そういうことなのでしょう。

幸いなことに広告モデルはゲームの大きな収入源になりましたが、実用系アプリとは相性が悪く主流とはなりえませんでした。
また、世界的に成功しているゲームの多くは、上位の数パーセントのユーザーによるアイテム課金でほとんどの収益をまかなうといった、いわゆる廃課金者を作る構造で富を吸い上げていきました。

Overcastはそうした構造とは異なる新しい仕組みです。
ここに廃課金勢は必要なく、常識的な金額で自分の愛用するものをサポートできるというとてもまっとうなモデルです。
お金を払っても応援したいというファンのみに支えられるという誰もがうらやむ方法がここに。不幸なひとはどこにも存在しません。

いいものを作っている人を応援したいという気持ちはだれもが持っているはずです。
それをこのようにとても上手に引き出したMarco Armentは、やはりなるべくしてなった成功者なのでしょう。

もちろん5%のユーザーが実際にパトロンになるかどうかは未知数です。
集まらなければもっと堅実な路線に引き返さなければならないでしょう。
しかしこれからもっとユーザーの母数が増え、全世界的に使われていくOvercastはきっと成功する。

これを書いている深夜2:53ですでに2,105人ものパトロンが付いています。
Overcast
すごい勢いで増加中。

アプリ界が新しい時代に踏み込む瞬間をみて、とてもワクワクしています。
はたしてこの流れに続くアプリは出てくるか。これからが楽しみですね。

 

【注意】
現在ユーザーが一斉にOvercastを利用しているため、サーバーエラーが出ることがあります。
エラーが出るからと悪い評価を下すのではなく、時間をおいてお試しください。
きっと気に入るから。

 

参考記事

Why Patronage? | Overcast

Marco Armentによるパトロン制導入についての説明記事。

 

このアプリがすごい No.014 Overcast | reliphone

以前に私が書いたOvercastレビュー。
一部修正しました。

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