Overcastはうちのサイトでも何度か取り上げているポッドキャストプレーヤーで、革新的な機能を搭載したトップアプリでした。
無音部分の自動削除や、自然な速度変更などがとても素晴らしいアプリです。
これまでの流れ
もともとは本体が無料で、無音削除や音量ブースト機能などを使うのには600円が必要となっていたのですが、昨年の10月に突如としてパトロン制の無料アプリに方針転換をしました。
パトロン制では気に入った人が月に120円を寄付として任意に支払う一方で、支払わなくても機能制限はない善意に基づいた画期的なものでした。
しかしそれもうまくいかなかったようで、2016年3月にはパトロンになっている人にだけ追加の機能をリリースします。手持ちのmp3をアップロードできる機能と、ダークテーマの追加です。もともとの理想からズレてしまったのは残念ですが、それでもほとんどの機能を無料で使えるまま提供されてきたわけです。
そして9月9日にさらなる方針を転換し、無料のユーザーには広告を追加したのです。
▼無課金ユーザーに表示される広告
料金体系の変更
そして3, 6, 12か月単位で支援ができたパトロン制を廃止し、年額1,000円のOvercast Premiumを新設しました。
パトロンの支援は単なる投げ銭と同じでしたが、Overcast Premiumはサブスクリプションになっていて、毎年自動更新されていきます。
この背景にはAppleがサブスクリプションの取り分を2年目以降から30%→15%に変更したことも関わっているでしょう。
変更に関する詳細はMarco Armentのブログ(※2)を参照ください。
要するに十分な収益を上げられなかったということですけど、パトロンになってくれた人の割合なんかも掲載されていて興味深い記事です。
広告解除について
さて、一部のユーザーでは勘違いも起きてレビューに低評価が付けられているようですが、過去にアプリ内課金で600円を支払って機能解放した人は広告が免除されます。
▼パトロン制以前の課金済みユーザーはここから広告解除が可能
デフォルトでは広告が表示されてしまいますし、説明不足なので勘違いしても無理はありませんが、過去に有料機能を購入した人であればこれで広告が消えるはずです。
過去にこれらの有料機能を購入していない人は年額1,000円のOvercast Premiumをご購入ください。
おわりに
方針転換に失望したという方もいらっしゃるでしょう。
しかし今回の変更では機能解放で600円支払った人はこれまで通り広告もありませんし、パトロンとして支援してきた方は年額1,400円から1,000円とお安くなりますので不利益はないはずです。(3か月、6か月が無くなったのは残念でした)
継続的な支援ではなく、360円とかの少額で支援を行った人は微妙な気持ちにさせられているかとは思いますが。
それにしてもMarcoは過去に広告ブロッカーアプリPeaceをリリースしていた人ですから、今になって広告に頼らざる得ないというのは少し首をかしげてしまいます。
あくまでも収入のメインはOvercast Premiumであることは間違いないんですけど、広告導入でも無料ユーザーから思い描くほどの収益を得られなかった場合はいったいどうなってしまうのか。(広告を増やす?まさか)
いいアプリをユーザーが支えることができる仕組みというのはある意味理想的なことで、ちゃんと成立するのであれば喜ばしいことです。
最近ではメモアプリのDrafts(※3)もアプリ内からチップをあげることができるようになりましたし、過去に紹介したPointOut(※4)というアプリでは開発者にコーヒーをおごるという支援まであります。
それなりの数のファンがいて初めて成立することではありますから、すべてのアプリにこうした仕組みが向いているわけではありませんが、買い切り以外で継続的な収益を上げられる方法を模索していくのは大事なことだと思います。
どんないいアプリでも開発が継続されることが一番大事ですし、持続可能な開発に見合った収益を求めるというのは間違っていません。
方針をころころ変えるというのは好ましいものではありませんが、一度決定したことを貫き通して立ち行かなくなるよりはずっといい。
いいアプリを提供してくれる開発者の皆さんには頑張っていただきたいものです。
参考
※1 Overcastのレビュー
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※2 Overcastが方針転換するに至った経緯などが記されています。
Overcast trying ads, dark theme now free – Marco.org
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※3 Draftsは1,200円と高額のアプリでしたが、より多くの人に使ってもらおうと600円に値下げしました。チップはそれとセットで導入されています。
サブスクリプションではないので安定した収益源にはなりそうもないのが心配ですが。
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※4 以前書いたレビュー。コーヒーをおごってそれをTwitterに投稿すると開発者からお礼の言葉が来ましたよ。ちょっとうれしい交流だよね。