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Bluetooth 5対応を謳うイヤホンの話

まずはじめに、この記事ではイヤホン本体の良し悪しについては書きません。
Bluetooth 5という規格がイヤホンにおいてどのように使われているかについて疑問を持ち、書いたものです。

AnkerがZoloというブランドでBluetooth 5対応の完全ワイヤレスイヤホンLiberty+を発売し話題となっています。
左右で音が途切れがちとされる完全ワイヤレスイヤホンですが、この製品は途切れにくいものだということで評価が高まっているのです。

数多くの有力なサイトでレビューが上がっているので読んだ方も多いでしょうが、Macお宝鑑定団のように“Bluetooth 5.0接続に対応したiPhone X、iPhone 8、iPhone 8 Plusと使用する場合、接続距離が、Bluetooth 4.xと比べて最大4倍まで延長されます”と書いているサイトがいくつも見つかります。

Ankerのエコーキャンセル・ノイズリダクション機能搭載Bluetooth 5.0接続フルワイヤレスイヤフォン「Zolo Liberty+」を試す | Macお宝鑑定団 blog(羅針盤)

Bluetooth 5だと4倍になる??

お宝鑑定団が実際に試した結果4倍に延長されたと書いているのであれば革新的な商品なのですが、これには疑問があります。実際はどうなのでしょうか。

Bluetoothの公式記事タイトルにもあるように、Bluetooth 5では通信距離が最大で4倍に延びるし、速度が2倍になり、通信容量が800%に拡大されます。

Bluetooth® 5 Quadruples Range, Doubles Speed, Increases Data Broadcasting Capacity by 800% | Bluetooth Technology Website

ただ、中身を読んでみるとそれが魔法のような技術革新ではないことがわかります。

“Bluetooth 5, projected for release in late 2016 to early 2017, will quadruple range and double speed of low energy connections while increasing the capacity of connectionless data broadcasts by 800 percent. ”

「Bluetooth 5は低電力接続において4倍の通信距離、2倍の速度、データ送信容量が800%に増加します」と書かれています。
この低電力接続というのは一般的に BLE(Bluetooth Low Energy) と呼ばれるもので、IoT機器やビーコンなどに用いられるものであり、オーディオ機器で使われる接続方式ではありません。
低消費電力なデバイスで使うわけですから、データ転送が高速になると通信を短時間で終わらせて消費電力を下げることができるメリットがある。また通信距離が4倍かつ速度が2倍になるのではなく、通信距離を延ばせば速度は落ちるし、速度を求めれば距離は短くなるというトレードオフな関係にあります。

このBLEという前提が抜けていると「Bluetooth 5では通信距離が4倍になるから部屋を移動してもイヤホンの音は途切れにくくなるし、速度が2倍になるから遅延も減って音もよくなるだろう」なんて考えてしまうでしょう。

Zolo Liberty+は日本語公式サイトの情報を読んでみてもBluetooth 5のメリットというのは一切出てきませんが、Kickstarterのページにはこんなことが書かれています。

“Bluetooth 5.0 is the ubiquitous wireless technology’s latest iteration. At the time of its release, Liberty+ will be one of the only devices to take advantage of its features.

・Doubled data transmission speed
・Bigger range
・800% increase in data-transfer capacity

Liberty+’s LDS antenna and Bluetooth 5.0 technology synergize to offer unbreakable connectivity within a 10m range.”

Liberty+: The First Zero-Compromise Total-Wireless Earphones by Zolo — Kickstarter

LDSアンテナとBluetooth 5の相乗効果によって10m以内で途切れにくい接続性を提供しますと書かれています。4倍の40mにはならないということです。
じゃぁここに書いてある転送速度2倍、距離が拡大、データ送信容量が800%に増加というのはどこにかかる内容なのかが問題になってくる。

Liberty+には専用のアプリでAnti-Loss Reminderという置き忘れ防止機能が盛り込まれています。
イヤホンとの接続が弱まると、置き忘れていないかという通知してくれるというものです。

このような機能はBLEビーコンを使った忘れ物防止タグなどで見かけます。
Bluetooth 5で通信距離が延びるのはBLEについてだと上で示してきましたが、もし宣伝文句通り実際にLiberty+の接続距離が延びるのだとしたら、このBLEを使ったビーコン機能のことなんじゃないかと考えると、接続距離が延びるということにも説明がつきます。
(Liberty+はZ-upという名前で音楽再生用とは別にもう一本コネクションを張る)

海外でもこの手の話は広まっていて、RadsoneというメーカーがBluetoothオーディオのクラウドファンディングをしている際にも「この商品はBluetooth 5に対応していないのか?」「まだ間に合うならBluetooth 5に対応してほしい」といったコメントがいくつも寄せられていました。

それに対するメーカー側のコメントはこうです。
“5.0 is not related with the audio performance. BT version has nothing to do with the audio application using A2DP (Advanced Audio Distribution Profile) because audio streaming through A2DP always goes with Bluetooth BR/EDR classic.
It does make sense that vendors put the BT version as a significant advantage only if their products are not audio applications but just wearable devices like Fitbit dealing with arbitrary data over Bluetooth BLE and/or the upgrade version of BLE that is BT v5.0. However, BT audio does NOT use any resources of the new features, but just use the classic wireless link, that is BR/EDR.
To sum up, please note that BT v5.0 in an audio application has no merit. Thank you.”

EarStudio: World’s first studio-quality Bluetooth receiver by Radsone — Kickstarter

簡単に書くと「音楽再生にはA2DPというプロファイルを使っており、それはBluetooth BR/EDR classicという通信方式です。Bluetooth 5はBLE通信を使ったFitbitのようなデバイスに対してはメリットがあるが、オーディオデバイスに関しては一切メリットがありません。」という返答がされています。

私もこの立場と同じです。

あとひとつBluetooth 5とは関係ないのですが、Bluetoothイヤホンで注意しておきたいのがノイズキャンセリングについてです。
よくCVC6.0ノイズキャンセリング対応って書かれているものがありますけど、これって通話時のノイズを低減する機能であって音楽再生時に周りの騒音を消してくれるものではありません。紛らわしいけどまったくの別物です。
普通にノイズキャンセルと書かれていたら、当然音楽再生時に使えるもんだと思っちゃいますけど、使えない罠です。

これもいろんなメーカーがミスリードをしてほしいのか商品名と一緒に併記してきます。
その結果↓こういう記事が生まれます。

軽量、防水でノイズキャンセリング対応。本日発売のネックバンド型ワイヤレスイヤホン「SoundBuds Life」レビュー | meeti【ミートアイ】

もちろん、この機種は音楽再生にノイズキャンセリングしてくれません。
メーカーがちゃんとユーザーのことを考えてたら『CVC6.0ノイズキャンセリング対応』なんて書く必要は無くて、『通話時のノイズを低減するCVC6.0対応』とでも書けばいいんですよ。買って失望するユーザーの気持ちを考えれば。

昔はノイズキャンセリングってだけで通じていたんですけど、こうミスリードさせるような使われ方が増えてきたので、従来の意味である周囲の騒音を消してくれるノイズキャンセリングのことをANC(アクティブノイズキャンセリング)と書くことが増えてきました。
BOSEやSONYのようなノイズキャンセリング製品をお探しの際には間違えないように気をつけましょう。

単純にBluetooth 5だからすごいということはないでしょってお話なんですけど、すべてを否定するわけではなくて、基本的に最新のチップのほうが低消費電力で高性能ですから、Bluetooth 5対応のチップを積んだイヤホンのほうが期待できます。

ただイヤホンがBluetooth 5になって何がよくなるのかを明確にせず、Bluetooth4.xと5との基本仕様だけを比較するのはずるい。
メーカーはちゃんと書いてほしい。

Zolo Liberty+を実際に購入して試してみればこんな長々と書くこともないんですけど、残念ながらお金がないです。
きっと誰かが検証してくれるでしょう。

ちなみにもう少し突っ込んだ内容については下の記事が非常に参考になりますので、興味がある人は読んでみましょう。

近距離IoT無線の主役ーBluetooth Low EnergyからBluetooth 5へ | Think IT(シンクイット)

Bluetooth 5 のはなし|Wireless・のおと|サイレックス・テクノロジー株式会社

Bluetooth5の補遺|Wireless・のおと|サイレックス・テクノロジー株式会社

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Comment

  1. しいば より:

    ためになる記事、ありがとうございます。今のところ、shureのカナル型イヤホンと以前お勧めいただいたJPRiDEのトランスミッターで満足してはいますが、いずれは欲しいなあと思っているところです。参考にします!

  2. Z より:

    そうですそうです。その通りでございます。
    販売者側がわざと誤解させるようにミスリードしてるんじゃないかとしか思えないようなケースも多いのでございます。

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