無音カメラで一番画質が良いものはどれかという質問があったので、条件をしっかり整えて比較検証をしてみました。
結論から言うと、現時点ではシンプルカメラがベスト。
次点でミラカメラ、Microsoft Pixと続く。
また撮影方式が異なるが、暗めのシーンではCortex Cameraが他の追随を許さないほどの美しさを見せつけた。
撮影は環境光の影響が無いように配慮し、三脚で固定しておこなった。ノイズをわかりやすくするために照明は暗め。
画像の一部を拡大して掲載する。
使用したアプリは以下の通り。
・BestCam
・OneCam
・StageCameraHD
・シンプルカメラ
・ミラカメラ
・Microsoft Pix
・Cortex Camera
の7種。比較用に純正カメラも加えた。
無音カメラの画質傾向はその方式により3つに大別できる。
動画切り出しのもの、純正と同等な撮影を行うもの、撮影後補正をかけるもの。
まずは動画をキャプチャすることによって無音化を実現しているものから見ていきましょう。ここに掲載していない無音カメラも、その多くがこの動画切り出しに分類されるものです。
BestCam、OneCam、StageCameraHDは高画質を掲げているが、どれも高画質とは言いがたい。
暗めのシーンでは極端にノイズが多くなり、全体的に緑や赤がまだらにかかっている。明るい場所で使う分には気にならないかもしれないが、画質を重視する人は他のタイプを選ぶほうが無難だろう。
次に純正と同等な撮影を行うものを比較していきます。
見比べてみてもらうとわかるように、動画切り出しのものよりもノイズが少ない。
無音で純正カメラと同等な撮影を行えるのがシンプルカメラとミラカメラです。
最後に独自補正をかけるタイプのMicrosoft PixとCortex Camera。
Microsoft Pixは撮影後に補正をかけたり、ブレの少ない画像を選択してくれるため、動画切り出しながらもノイズは控えめ。ただし青みがかった補正をしてしまうのは難点。
Cortexは圧倒的に綺麗な画像を得られる。
ノイズはほとんど目立たないが、500の中の横線はのっぺりとしてしまった。
各アプリの特徴を解説していきます。
BestCam
【特徴】
動画切り出し。
写真サイズ 1512×1512~3024×4032ピクセル。
シャッター音はマナーモードスイッチ連動。(設定で常にオフにもできる)
『標準・くっきり・明るく・料理・夜間』と5種類のフィルタのライブプレビューができる。
写真サイズは3段階で設定可能。
フラッシュは無し。(トーチはあり)
動画撮影可。
撮影画面の映像が少しジャギって見えるのと、画像サイズ設定がアプリ内で完結していないのがもったいない。
OneCam
【特徴】
動画切り出し。
写真サイズ 480×640~3024×4032ピクセル。
シャッター音はマナーモードスイッチ連動。
写真サイズを手軽に切り替えられる。
フラッシュは無し。(トーチはあり)
ボリュームシャッターに非対応なのでリモコン撮影も不可。
長くアップデートが続けられており古くからのユーザーに評価が高い。
StageCameraHD
【特徴】
動画切り出し。
写真サイズ 720×1280~3024×4032ピクセル。
無料版だと一定回数ごとに広告が表示される。課金をすることで広告非表示、写真のサイズが8MP→12MPに向上する。
有料版もあり。
シンプルカメラ
【特徴】
写真サイズ 480×640~3024×4032ピクセル。
シャッター音はマナーモードスイッチ連動。
無料版だと一定回数ごとに広告が表示される。課金をすることで広告非表示、HEIC対応、写真のサイズが8MP→12MPに向上する。
純正と同じ手振れ補正、フォーカス・露出ロックやちゃんとしたフラッシュなどが使え、ライブフォトや動画撮影も可能。
撮影後にリサイズをするせいか、古い端末でのサクサクとした撮影には向かないかもしれない。
盗撮対策のためか、上を向けての撮影はできない。
写真サイズの変更は、画面表示項目のカスタマイズで設定することで撮影画面からでも手軽に切り替えられる。
iPhone7以降の機種では高圧縮HEIC、HEVCフォーマットでの撮影も可能なので、写真の容量を気にする人はシンプルカメラがオススメ。(要・アプリ内課金)
iPhone6s以前の機種では無音化の確実性を高めるために、iPhone7以降の機種とは撮影方法・画質が異なります。今回評価したのはiPhone7です。
ミラカメラ
【特徴】
写真サイズ 3024×4032ピクセル。
シンプルカメラと同様にこちらも動画切り出しではなく、ちゃんとしたフラッシュ機能、HDR撮影などがあります。
画面下部にバナー広告あり。課金することで動画の撮影サイズ設定やマニュアル撮影モード、秘密のアルバム機能などが使えるようになります。
過去にOneCamの名前を使って販売したことで悪いイメージは付いてしまったけれど、性能は良い。
写真のサイズは純正カメラと同様に固定だが、サクサクとした撮影が可能。
Microsoft Pix
【特徴】
写真サイズ 3024×4032ピクセル。
シャッター音はマナーモードスイッチ連動(設定で常にオフにもできる)。
マイクロソフトがリリースした完全無料の無音カメラ。
様々な補正機能などを備えており、スキャナやタイムラプス撮影など様々な使い方ができ、非常に多機能で無音カメラの枠を超えた存在。とりあえず無料が良いならまずはこれ。
古い端末だと重いという評価もありますが、新しめの端末だと問題にはならないでしょう。
色温度の修正が一度入ったものの、それでもまだ青みがかった補正をする特徴がある。
マナーモードスイッチに関係なく常に無音に設定もできるが、フラッシュ撮影では音が出てしまう。
Cortex Camera
【特徴】
写真サイズ 4536×6040ピクセル。
多重撮影したものを合成することで非常にノイズの少ない綺麗な写真を撮影できる。
撮影には明るさに応じて時間がかかるため、動く被写体には使えず、撮影者もできるかぎり動かないようにする必要がある。室内でのブツ撮りには最高。
どれを選ぶべきか
一番最初にも書いたように、普段使いにはシンプルカメラをオススメ。純正と同等品質の撮影を無音で行えます。
ミラカメラは1年以上更新がないのに対し、シンプルカメラはiPhone Xや、iOS11から使えるようになった高圧縮フォーマットのHEIC、HEVCにも対応と新しいものにも意欲的なアップデートをしています。
OneCamは画質の面でもUIの面でも優れているわけではありませんが、50回以上に及ぶアップデートを重ねており古くからのユーザーを中心に評価が高い。
無音カメラというのはこれまでも数多くのアプリがリジェクトされてきた歴史がある中で、OneCamに代表される動画切り出しタイプは安定してアップデートが続いているので、そのあたりも評価されているようですね。
動作が軽く、古い機種でも手軽に使えることと、480×640~という小さなサイズを選択できるためストレージを圧迫しないことが人気の理由でしょう。3024×4032では2MB以上になるのに対して、480×640では100KB程度に収まるのでちょっとしたメモ代わりに使うには便利です。
ストレージ容量を気にするのであれば、JPEGの半分程度のファイルサイズになるHEICに対応したシンプルカメラ(※アプリ内課金が必要)がベストな選択肢。
HEICで撮影できるのはiPhone7以降にはなりますが、ファイルサイズが半減するため480×640では50KB程度と驚異的な小ささですし、3024×4032でも1MB程度。設定で画素数切替ボタンをオンにすることで、撮影画面上でも簡単に画像サイズを切り替えられるのですからもはや死角がありません。
日本人開発者さんなので問い合わせにも対応してくれますし、バグ修正も素早いです。
Cortex Cameraはメインでの使用には向きませんが、画像を見ていただいてわかるようにその低ノイズっぷりは圧倒的なので、サブとして購入されることを強くオススメしたい。
Microsoft Pixは発色に癖がありますが、広告もなく唯一の完全無料の無音カメラなので、無料派の人にはとてもオススメ。顔認識があるので人物撮影にも向いているし、Retina Flashも使えるのでセルフィーにも良い。動画のスタビライズも強力。
おわりに
テストで使用すると予告していた超微音カメラについては、比較を行うまでの水準に達していなかったため本結果からは除外しました。
【追記】
テスト時にはPhotograph+も水準に達していなかったため比較には使いませんでしたが、バージョン2.3のアップデートで純正と同等の水準にまで画質が向上しています。
価格も安いため、検討すべきアプリのひとつと言えるでしょう。
【追記】
また手振れ補正に強いものもテストしてほしいという要望もありましたが、一定の手振れを再現させることは難しいので今回は評価外とさせてもらいました。
シンプルカメラとミラカメラにつきましては純正と同じ手振れ補正機能が搭載されています。またMicrosoft Pixには撮影した前後のものからブレの少ないものを自動でピックしてくれる機能がありますので、手振れ対策が必要な場合はこの3択かなと思います。
今回は無音カメラアプリの画質に焦点を当てた比較でしたが、画質以外の面での使いやすさ等はまた別にあります。
特に動画切り出しのものは画質こそ良くないですが、手軽さなどで高い評価を集めているので、画質が悪いから使えないということにはなりません。自分の用途にあったものを探してみてください。
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シンプルカメラには同じ開発者による類似のアプリ、シンプルRAWカメラとファーストカメラがリリースされているので、それについても補足しておきます。
どちらもシンプルカメラと同様のアプリ内課金があります。
まずシンプルRAWカメラはアスペクト比や画像サイズ変更などの機能が削除されていますが、無音でRAW撮影できるという珍しいもの。
ファーストカメラはストアの説明を読む限りではシンプルカメラに比べて非常に機能が少ないように見えますが、実際にはほぼ同等で、削られているのはコードリーダー機能と写真編集機能(写真編集機能はシンプルカメラでも廃止予定)くらい。逆にシンプルカメラにはないスキン(テーマ)や、常に無音撮影をするマナー撮影設定が追加されています。
またシンプルカメラは仰角45度以下での撮影が制限されており、空やビルなどを仰ぎ見る撮影はできないことがありますけど、ファーストカメラとシンプルRAWカメラにはそのような制限はありません。画質も同等。
なので総合的に見るとファーストカメラのほうが魅力的ですかね。
似たようなアプリなのでユーザーとしてはどちらを選ぶべきか悩ましいところです。
動画切り出しでないものについては、その仕組み上、まれに音が出てしまうという報告がありますけど、そのことについてシンプルカメラの開発者さんにお伺いしたところ、低スペックな端末やCPU負荷がかかっている状態では音が出てしまうことがあるということでしたが、処理を工夫してほとんど改善されたとのことです。
テスト環境
iPhone 7
iOS 11.0.2
BestCam v3.1.4
Cortex Camera v2.12
Microsoft Pix v1.1.3
OneCam v5.8.1
StageCameraHD v2.7.2
シンプルカメラ v3.5.3
ミラカメラ v3.0
使用フィギュア メカトロウィーゴ
記事内の最大画像サイズは端末に依存します。
画像サイズは選べる中で最大のものを、StageCameraHDとシンプルカメラについては課金をした上での最大サイズを利用。
オリジナルの画像と拡大切り取りした画像を詰め合わせたものを置いておきますので、しっかり比較したい人はこちらをダウンロードしてみてください。
41MBあります。
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試験的に↓スライドショーを付けてみました。RSSだとなんのこっちゃですけど、サイトで見る分には比較しやすいかな?どうでしょうか。
非常に分かり易いレビュー ありがとうございます
早速 シンプルカメラを有料に・・と思いきや、ファーストカメラもほぼ同機能とのこと。
そして編集機能も削られてますます代わり映えがしなくなる?!
「二つを統合!新アプリ!」なんてことになったらどうしよう・・ と思いとどまりました。
シンプルカメラ、最近使ってなかったんですがアップデートを重ねて使いやすくなってたんですね!
有用な記事、ありがとうございます。
ファーストカメラもシンプルカメラ同様のアップデートがありました。
私も無音カメラ探しで数千円課金して比較しましたが、購入していないアプリもあり参考になりました。
ありがとうございます。