Documents 5を中心としたReaddleの戦略について。
Documents 5 – 高速 PDF リーダー、メディアプレーヤー、ダウンロードマネージャ
無料
販売: Igor Zhadanov
iPhone/iPadに対応
レビュー → iOS定番ファイラー5種の機能比較まとめ
Readdleとは
大学の同級生だった仲間4人で始めた、ウクライナのアプリデベロッパ。
2008年、AppStoreがオープンしたときの最初の500本に、彼らが開発したReaddleDocsがあった。
$14.99で売り出されたそれは予想以上の売り上げをもたらし、彼らは勤めていた会社を辞めReaddleに専念することとなった。
今日では累計2500万回以上のダウンロードを記録し、会社の規模は50人にまで成長している。
主なアプリ
・Documents 5(無料のファイラー)
・PDF Expert 5(PDFリーダー、注釈)
・Scanner Pro(書類の電子化スキャナ)
・Printer Pro(印刷支援)
・Calendars 5(スケジュール管理)
参考
Getting rich on apps in the heart of Ukraine | The Verge
Readdleの歴史を紐解くインタビュー。良記事です。
Readdleの変化
Readdleはいくつもの便利なアプリを発表してきましたが、2013年になって突如方針転換を図ります。
主力であったReaddleDocsを刷新し、無料のDocuments by Readdleとして再出発したのです。
無料アプリとは思えぬ機能、日本語ローカライズなどを経て評価がぐんぐん高まっていきました。
みんなが思ったはずです「なんでこれが無料なんだ?」と。
まともなファイラーアプリと言えばほとんどが有料の中、広告もなしに無料の実用的なアプリが出た上に、ほとんどが英語アプリでしたから人気を集めました。
技術力の高さを見せるための広告塔だろうと思っていたのですが、今年の2月、Documents ver5.0によって驚くべき戦略が明らかになりました。
Readdleの戦略
無料のDocumentsはただの広告塔ではなく、戦略的な核となるアプリとして成長したのです。
機能を追加するためのアプリ内課金をアドオンと呼びますが、Readdleの呼称するアドオンは少し違っています。
独立した外部のアプリ、PDF Expert 5やPrinter Proのことをアドオンと呼んでいるのです。
PDF Expert 5がインストールすることで、DocumentsでもPDF Expert 5の機能が使えるようにしたわけです。
アプリ内で1,000円払って機能追加させるより、別のアプリを1,000円で買わせればセールスとしてそのもう1本のアプリがランキングに上がってくるわけで、非常に賢いやり方です。
売り上げは同じでもダウンロード数は増えるのですから。
別アプリでアンロックするというやり方は以前からありましたが、古い方のアプリをインストールしていれば新しいアプリを無料で使えるようにする、といった保守的なものが大半でした。
Readdleの独立したアプリをアドオンとして位置づけ、囲い込もうとする手法には感嘆しましたね。
アプリ間連携はより密接に
無料のDocumentsでPDFに書き込みをしようとすればアドオン(PDF Expert 5)を勧めてきます。
ではそれを購入してみましょう。
今までの考え方であれば、DocumentsからPDF Expert 5にOpenInなどでファイルを渡して、渡した先のアプリで操作をするのが普通でした。
しかしReaddleはDocuments本体でPDF Expert 5の機能を使えるようにしたのです。
これによってファイルをDocumentsで一元管理できるというメリットが生まれます。(アドオン機能をアンロックした後はPDF Expertを削除しても機能はそのまま)
Printer Pro(*1)やScanner Pro(*2)はアドオンとしての機能はしていませんが、独立したアプリとして連携してくれます。
Documentsから印刷する場合は、AirPrintだけでなくPrinter Proも選択でき、Printer Proで印刷をしたら自動でコールバックしてくれるので、使い勝手としては別アプリに送るような面倒くささはありません。
Scanner Proはまだちょっとうまく組み込めていないようで、Documentsからの利用はできませんが、Scanner ProからPDF Expert 5で注釈や、Printer Proでの印刷などの連携があります。
現状でアドオンとして完全に統合されているのはDocumentsとPDF Expert 5の組み合わせだけですが、他のアプリに関しても近いうちに(秋?)、より密接なものとなるのは確実でしょう。
(*1 AirPrint非対応の機種でもiPhoneから印刷できるようになるアプリ。AirPrint対応プリンタでもiOSで印刷させるより設定が細かくできるので便利。PDFプリンタとしても使えます)
(*2 書類を撮影することでPDFや画像として取り込むアプリ。補正機能やエッジ検出によって手軽に綺麗に取り込める)
Readdleの強み
どのアプリもハイレベルである。
そして、独立したアプリをつなぐ核として無料のDocumentsが存在するのです。
Readdleのアプリは700円~1,000円の価格帯にあり、少し手が出しづらい金額ですが、それらが相互に連携しあうことで単体で使う以上のメリットをもたらしてくれるのです。
まるで昔のSONYのように、周辺機器をSONYで統一するともっと便利だよ、って具合です。
入口は無料でいい。
いいものだってわかればユーザーは追加のお金を払う。
まとめ
Readdleは秋に大きな計画があるようで、次はどんな一手が飛んでくるのか非常に楽しみです。
連携面では独立しているCalendars 5も、例えばPrinter Proとなら連携できるでしょうし、連携したら予定の印刷とか結構便利そうですよね。
Scanner Proも連携が甘いのでもうちょっと期待したいし、OCRっぽいイメージがちょいちょい出ているので、そっち方向でも楽しみ。
さて、あれだけのよくできたファイラーを無料で公開するってのは、なかなか真似できたもんではありませんが、別々のアプリをアドオンとして結びつけるのは他の開発者さんにもできることです。
相性のいいアプリをバラバラにリリースするのはもったいない。
例えばiWareさんのアプリはこのケースにとてもマッチします。
WebサイトをPDF化してくれるアプリShotWeb(*3)と、印刷補助アプリPrimePrint(*4)には連携機能がありませんが、双方が組み合わさったらどうでしょうか?
ShotWebをインストールすることで、PrimePrintでPDFプリンタ機能がアンロックされるとしたら?
PrimePrintをインストールすることで、ShotWebで印刷ボタンが有効になるとしたら?
(*3 レビュー → ShotWeb – Webのスクリーンショット保存に最適)
(*4 レビュー → Prime Print – かゆいところに手が届く!印刷補助アプリ)
——
iOS8に合わせてAppStoreも今後大きく変わります。
App bundlesによって、複数のアプリをセット販売することが可能になるのです。
バラバラに1本ずつ販売していたアプリに、セットで使う必然性を用意してやれば売り上げは変わってくるはずです。
そしてそれはブランド化に寄与する。
セール中のReaddleアプリ
Readdle設立7周年記念、48時間限定セールをしています。
PDF Expert 5 – Fill forms, annotate PDFs, sign documents
1,000円 → 500円
販売: Igor Zhadanov
iPhone/iPadに対応
初値下げ。
PDFリーダー。注釈なども使いやすいです。
Calendars 5 – タスクマネージャ搭載、Google カレンダーとも同期可能なスマート・カレンダーアプリ
700円 → 300円
販売: Igor Zhadanov
iPhone/iPadに対応
スッキリしたデザインで見やすく使いやすいカレンダー。
Scanner Pro by Readdle (書類、ホワイトボード、名刺、レシートのスキャンに役立つスキャナー)
700円 → 300円
販売: Igor Zhadanov
iPhone/iPadに対応
スキャナアプリで悩んでる人はとりあえずこれを使ってみるのがよろしいかと。
Printer Pro iPhone から ワイヤレス印刷 文書メール ウェブページ クリップボード
500円 → 300円
販売: Igor Zhadanov
印刷補助アプリ。AirPrint非対応の有線プリンタでもパソコンを介して印刷できるようになります。
AirPrint対応プリンタの場合でも印刷設定が細かくできたり、PDFプリンタとしても使えますので、持っておくと便利です。
同iPad版 Printer Pro 700円 → 300円
PDF Converter – Save Documents, Web Pages, Photos to PDF
700円 → 200円
販売: Igor Zhadanov
PDF変換アプリ。
Printer Proと役割がかぶりますね。