AppStoreの方針が変わり、同じ系統のアプリは1つにまとめるように指導されたという報告を見かけるようになってきました。
すでに一本化の動きは各所で見られており、CamScannerは有料版を取り下げて無料版への移行を促しています。
Apple社のポリシー変更によりアプリは各1種類のみApp Storeへ出品可能となりました。Camscanner有料版は今後出品を取り下げます。 登録後このページにてアカウントを有料版にアップグレードしてください。無料で使用できます。
Camscanner アップグレード
これまで有料版と無料版で別々に提供されていたものが単一のアプリで提供されるようになれば、開発者としてもアップデート作業が1回で済むというメリットはあります。
またゲームのシリーズ展開についても、1つのアプリに統合しなければいけないという指導が入った報告があります。
同じフレームワークのアプリは一つにまとめないといけない、という理由でリジェクトされました。シリーズとして脱出1・脱出2というふうに別々のアプリで出すのは認められないようです。そうなると、容量やゲーム毎の保存データなど私にはハードルが高そうなので、諦めることにしました。
— K (@escape_robamimi) 2017年7月15日
これは下記ガイドライン(4.3の項)が該当したのだそうです。
特定の場所、スポーツチーム、大学などに向けた異なるバージョンが存在するアプリケーションの場合は、単一のアプリケーションを提出し、App 内課金で異なるバージョンを提供することを検討してください。
App Store審査ガイドライン – Apple Developer
シリーズ展開が多い脱出ゲームやノベルゲームなどへの影響が大きそうです。
今後は無料+アプリ内課金に移行するものが増えていくと思われますが、ガイドラインには「検討してください」と書かれているだけであって、まだ強制力までは無いように読み取れます。実際にIIJmio専用の通信量チェッカーアプリImWidgetは数日前に無料版となるImWidget Liteをリリースできています。このあたりは審査にあたるレビュアーさんによって判断が分かれていそうで、しばらくは混乱があるでしょう。有料版と無料版が一本化せずに両立していけるかは注視していく必要があります。
Lumen Trailsというアプリシリーズでは色とテンプレートだけ変えて、たくさんの兄弟アプリがリリースされてきましたが、こうしたアプリは今後認められないということになるでしょう。
しかし似たようなアプリでも用途ごとに使い分けるというのもそれはそれで便利なものですから、単一のアプリに統合されても分けて使える仕組みは欲しいものです。(URLスキームとショートカットアイコン作成機能が用意されているアプリが増えるといいんですが)
デメリットもあります。アプリ内で有料版機能をアンロック・ダウンロードする方法では、そのアプリが配信停止になった場合、パソコンにipaファイルを保存してあったとしても追加のダウンロード分はipaファイルに含まれていません。過去に購入したアプリでも追加コンテンツ分は使えなくなってしまうことは覚悟しておく必要があります。
ストアから消えてもipaを保存しておけば安心という考えは、残念ながら通用しないことが増えていくでしょう。
オンデマンドリソースガイド: オンデマンドリソースに関する要点
Lite? Free? Pro?
これまではLiteやFreeといった形で有料版から機能を削いだものが提供されてきたのですが、最近になってアプリ名やアイコンにFreeと入れることが制限されるようになりました。
なので多くのアプリがFreeからLiteに変わっていっているわけですが、今後有料アプリと無料アプリの統合化が推し進められるのであれば、有料版はPro・無料版はLiteというネーミングの時代は終了し、ProもLiteも付かない無印アプリが増えていくと思われます。
単なる通常版にFullとかProって付くのには違和感がありましたから、シンプルになるのは歓迎したい。
Alternate Icons
iOS10.3からはAlternate Iconsというアプリのアイコンを変更する仕組みが導入されています。
アプリ側の対応は必要ですが、簡単にホーム画面のアプリアイコンを変更することが可能になったわけです。Pcalc Liteなどのアプリで体験できます。
いままでは無料版のアイコンにLiteといった文字が入っていたものが多かったのですが、課金した人には有料版のアイコンに変更するなんてこともできます。
これも有料アプリと無料アプリを統合する上で重要になってくるポイントですね。
話は変わりますが、これで「新しいアイコンが気に入らないので戻してください ★1です」みたいなしょうもないレビューも減っていくことを期待したい。
トライアル
先日OmniFocusがサブスクリプションではなく買い切りでのトライアルを設け、フル機能を14日間無料体験できるようになりました。
ユーザーとしてはフル機能を試して気に入ったら課金するというのは理想的です。
いきなり有料版には手が出ないだろうから、機能を制限した無料版を用意するというのは一般的な方法ですが、ユーザーにとってはそれでも一部の機能しか試すことができずに結局本来のポテンシャルがわからないまま購入の判断を迫られることになります。
せっかくダウンロードされたアプリが全部の機能を使ってもらう前に離脱されてしまうのは、あまりにもったいない。
iOS11からはDeviceCheckというAPIが追加され、そのデバイスで過去に当該アプリを利用したことがあるかを手軽にチェックできるようになりました。再インストールでもチェック可能なものですので、開発者にとってはこれがフル機能のトライアルを実装する後押しするものになってくれるでしょう。
[iOS 11] 初回起動判定などに使える DeviceCheck フレームワークとは #WWDC17 | Developers.IO
サブスクリプションではない買い切りのトライアルも増えてくれることを期待します。
おわりに
有料・無料と分かれていたアプリが、無料(フリーミアム)にまとまるというのは、AppStoreでの検索からのダウンロードという導線を考えるといい方向性だとは思います。
しかし有力なアプリの多くがそちらに移行してしまうと有料ランキング・無料ランキングという分類がさらに形骸化してしまうことは避けられません。
無料ランキングの上位にある無料アプリだからダウンロードしたのに、結局お金を払わないとまともに使えないものだったとなればユーザーは良い感情を抱かないでしょう。フリーミアムを推進していくのであれば、Appleはアプリ内課金がどのような形で提供されているのかをもっとわかりやすく示していく必要があります。
課金したユーザーと無料版ユーザーのレビューが混在することになりますから、参考になる情報をすくい上げるにもノイズが増えてしまうことが懸念されますが、有料版と無料版とで分散していたレビューがまとまるメリットも無視はできません。有料・無料ユーザーのレビューが一目で判別できるようになっているといいんですが難しいでしょうねぇ。
アプリ内課金のセールというのは見つけるのが非常に難しいので、多くのアプリが無料+アプリ内課金に移行してしまうと、うちのようなサイトは今後厳しくなっていく可能性が高いです。どうしましょうね。
とりあえず「(アプリ内課金で)○○ってアプリがセールしてますよ」という情報は常時募集しておりますので、コメント欄とかTwitterで教えていただけると助かります。
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ひとつのアプリで複数のバージョンが用意されているといえばバージョン違いが3つもある優秀な動画プレーヤーのnPlayer(Lite・無印・Plus)のことが思い出されます。
これも今後はまとまっていくのかなーと気になるところですが、じつは、このたび増えました。
まぁAndroidの話なんですけど、ベータテストされていたAndroid版がついに正式リリースされています。
nPlayer – Google Play の Android アプリ
もしAndroidをお使いで、いい動画プレーヤーを探しているという方がおられましたら試してみるといいですよ。
この記事読んで驚きました。有料の買い切り型でもネットに繋げないと遊べないアプリがサービス終了してから全く遊べなくなってショックを受けたので、無料でも有料でもネット接続なしで最後まで遊べるアプリを優先して購入していましたがこれからはそれも少なくなっていきそうで残念です。
そんな風になるのですね。私は何種類もストアに〜版があるのはいつも困惑させられるので1つに統合されるのは嬉しいですが、さすがにシリーズ物のゲームなどが出せなくなるのは開発者さんにとっては難点ですね。アイコンを変えられるのは楽しみですね。ずっとホーム画面に表示させられるものなので不恰好なものはホームに置きたくないし使いたくなるので、「アイコンが気に入らないから星1」レビューの気持ちはよくわかります。それが解消されれば開発者にとっても利用者にとっても喜ばしいことですね。